第6章 第五章 タイムリミット&ストップタイム
「ま、不味いですよ!!もし、主様に知られたら………」
「その時は私が責任を取るよ。というより、律儀に案内してから言うなんて、お前も意地らしいねぇ~このこのー」
「もしや、酔っておられますか?とても、素面には見えないのですが。」
「はははっ、まさか。酒なんて何処にあるんだ。」
彼岸花は笑って言いつつ、小娘の部屋の扉を開けようとした。
「……………ん?あれ、開かない」
「そりゃあ、鍵は掛かっていますよ。」
「マジかよ。鍵どこ」
「主様の鞄の中でしょうね」「うわお。手詰まり」
こんのすけと軽口を叩き合うが、それでも開かないものは開かない。
「参ったなぁ……………あ」
天井を仰いだ彼岸花はふと、気がつく。
「そっか。その手があったね」
「彼岸花様?」
不安そうな顔をするこんのすけの頭を撫でて、彼岸花はにっこりと笑う。
「な、何故床下から行くのですか!!」
「いや。下なら流石に小娘も管轄外でしょ。やるなら徹底的にね」
そう、こんのすけの発言からも察せる通り、二人が現在居るのは床下だ。
正確には屋敷の下で、冷たい地面が心地よい。時折目の前を百足が通り過ぎるが、それさえ我慢すれば、永住も夢じゃない涼しさだ(ただし夏に限る)。
彼岸花が自然の偉大さを改めて実感していると、横を歩いていたこんのすけが声をあげる。
「そろそろです!彼岸花様!」
「よーしよし。ならば、突撃だね。行くぞ、こんのすけ!!」
刀で床を器用に切って、畳を持ち上げる。
実際に顔が室内に出ると、一層彼岸花は感動した。
「ほ、本当にいけた。………相変わらず差殺風景な部屋だなぁ。」
「よっと………おお、本当に出れましたね」
こんのすけも感動した様で、煤まみれとなった顔をキョロキョロとめぐらせた。
「………それじゃあ、漁りますか。一先ず、日記らしき物を見つけたら報告ね!」
「探すものが不穏すぎます。ですが、私もいい加減腹を括りましょう!これも、本丸の未来のためです!!」
「よくぞ言った!じゃあ、始めるぞい」
手始めに、彼岸花は机を漁る。
座椅子とセットで、色も統一された机は中々に洒落ており、彼岸花は少しだけそのセンスは認めてやった。
机の上には何も乗っていないので、三段ある引き出しに手をかける。