第6章 第五章 タイムリミット&ストップタイム
それは思いもしない朗報であった。
真剣な声色のこんのすけを見ながら、彼岸花は頷く。彼の言いたいことは理解した。
「成る程。部屋を漁るチャンスと言うわけだね。大丈夫、上手くやるさ」
「何のお話しですか!?真面目に聞いてください!!」
「止めた方がいい。彼女に言葉は通じないんだ」
「どういう意味かね、歌仙君。言葉より先に拳が出る君に言われたくはないなぁ。」
「君こそどういう意味だい?再戦なら受けてたつよ」
「……………」
「……………」
「お二人とも刀を抜いて何を始めるつもりですか!!とにかく、話を聞いてください!!」
歌仙との長い茶番を一旦止めて、彼岸花は半泣きのこんのすけを見る。
「いや、だって。小娘が政府に呼び出されたら何が問題なの?どうせ、奴の行いがバレたわけじゃないんでしょ。」
「それは、そうですが………私が言いたいのは」
「彼女が出掛けたのなら、今夜が問題、ってことだね。」
「え、何故?」
こんのすけの言葉を引き継ぐように燭台切がそう言うが、彼の言っている事が今一つ解らない。
小娘が出掛けて何故今夜が問題になるのか。純粋な疑問であるはずだが、彼岸花以外の面々は気付いている様で、愛染に至っては僅かに震えている。
良いことじゃないのは、聞く前から解った。
「………何か、悪いことなんだ」
「あぁ。まぁ、僕らもどうなるかは解らないんだけどね。取り敢えず、今夜は気を付けた方がいい。」
「……………解った。肝に命じとくよ」
今夜、何が起こるかは解らない。
まるで、病院の待合室みたいだ、なんて彼岸花は呑気に思った。妙に体調が優れなくて、診察結果を待つときの様な不安と、祈る気持ちがおり混ざった心境。
「一先ず、ここで解散にしようか。君も他にやることがあるだろう。」
彼岸花の緊張を汲み取ってか、歌仙がそう言ってくれる。彼岸花としても、確かにやることがあったので助かった。
「うん。ちょっと、やることはあるね。」
「じゃあ、ここまでだね。皆戻ろうか。」
燭台切の促しもあって、皆が解散していく。
震える愛染の様子が気になったが、獅子王が彼の面倒を見ながら戻っていったので、取り敢えず獅子王に任せる事にした。
皆が去った庭。
残っているのは彼岸花とこんのすけだけ。
「じゃあ、こんのすけ。小娘の部屋まで案内宜しくね」
「えっ」