第6章 第五章 タイムリミット&ストップタイム
獅子王に対し、彼岸花が突っかかっていると、廊下を歩く足音がした。
その音に彼岸花含め、全員が廊下を見る。
廊下から縁側に姿を表したのは、茶髪の気むずかしそうな男。
「長谷部君!」
燭台切が声をかけると、男は足を止めて庭に集まる七人を見た。
「燭台切か、そんなところで何をしている?………しかも、そいつと一緒に」
長谷部と呼ばれた男は、彼岸花を見て忌々しげに言った。
「長谷部君、そんな言い方はないんじゃないかな?彼女は悪い子じゃないよ」
「っふん、遂にお前までたぶらかされたか。いい加減にしておけ。女なんて、所詮最後は汚い面の下を見せる。」
「長谷部君………」
燭台切と長谷部が言い合っているが、彼岸花はそれどころじゃなかった。
(この人、夢に出てきた………)
テレビの奥の人物を目の前で見たような感覚。
そう、この長谷部という男は、夢で横たわっていたあの彼だ。
彼岸花は長谷部の姿をはっきりと見たのは今が初めてだ。にも拘らず、彼は夢に出てきた。それも、夢で見たと思い出せるくらいはっきりと。
これは、どういう事なのか。
解らないが、この出来事は彼岸花にあの夢をただの夢じゃないと決めつける出来事となった。
言い合いを続ける燭台切と長谷部。
どうやらこの長谷部という男、そうとうな女嫌いらしい。なんとも、理不尽な話じゃないか。
燭台切が必死に言い返してくれてはいるが、如何せん長谷部は頭の回転も早いらしく、言い負かされそうな雰囲気だ。
庇ってくれた燭台切には感謝の念で一杯だが、最後は彼岸花の問題だ。
彼岸花は燭台切と長谷部の間に立ち塞がった。
長谷部が彼岸花を睨む。
その目には、女を毛嫌いする色と共に、燭台切達を仲間に率いれた事への怒りも滲んでいた。
彼岸花はその目を見つめ返す。
目から伝わることはそう多くはないが、大事なことは時に言葉より伝わる。
長谷部が逃げないことを確認して、彼岸花は口を開いた。
「色々と言いたいことがあるけど、先ず一つ。」
「……………」
「私はさ、女としてここに居るんじゃない」
「…………で?」
「女だから、刀だから。政府に作られたから、どれも私がここに立っている理由じゃない。」
彼岸花は息を吸った。
対立する長谷部との間に、冷たい空気が流れた。