第6章 第五章 タイムリミット&ストップタイム
彼岸花はこんのすけに話した。
この屋敷の前審神者がどんな人物だったのか、太郎太刀がどうなってしまったのか、彼岸花が彼をどうしたのか。
全てを話して、彼岸花はこんのすけの言葉を待った。
「そんなことが……………」
こんのすけはそう言って、口を閉じた。
無理もない。あまりにも壮絶な話だ。
飲み込むには、時間がかかる。
「………………前の審神者様の事は、残念ですが私の担当では無かったのです。」
「あ、そうなんだ。いや、まぁ。解ってたけど」
知っていたなら、他のこんのすけはともかく、このこんのすけは止めようとする事だろう。
知っていて騙せるほど、こんのすけは器用じゃない。………と、信じている。
「前の審神者のこと、政府は知ってるの?」
「………解りません。知らされていないのです。」
「………そっか。」
やはり、対した期待は出来ない様だ。
何処かで理解していた。
政府にとってこの本丸は数多くある本丸の一つに過ぎず、もしここが無くなったとしても政府にとって対した問題ではないのだと。
といっても、本丸が無くなってもいいとまで思っている訳ではないだろう。けれど、彼等と此方とでは思いの大きさに圧倒的な格差がある。何があってもこの本丸を守ろうとするこんのすけや一部刀剣達とは違い、政府にそこまでの思いは無いだろう。
政府を否定する訳じゃない。彼岸花が今ここに居られるのは政府のおかげなのだし、短い間ではあったが自分に優しくしてくれる人もいた。
あの二人にも、政府にも、感謝している。
悪い人間ばかりじゃないと、今でも思えるのはあの二人の友人のおかげだ。
まぁ、取り敢えず政府に期待は出来ない、ということだ。
「………あまり、政府に期待はしない方がいいね。あ、でもね。悪いことばかりじゃないよ。今回の件は沢山の刀剣達と話す機会をくれたし、私自身、色々と考えられたからね。知れて良かった。そう思ってる」
彼岸花は笑って、そう言った。
知れて良かった。そう、絶対に。
知らないままだったら、きっと誰かの苦しみを死でしか終わらせられなかった。
向き合おうと、すこし乱暴でも思えるようになったのは、大きな収穫だと思う。
「太郎太刀の苦しみを、私は殺すことでしか楽には出来なかったけど、彼は大きな事を教えてくれたよ。」
彼岸花はこんのすけと目を合わせて、呟いた。