第6章 第五章 タイムリミット&ストップタイム
ーーー結局、あいつらも一緒か
そう言って、少女が机の上に置いてあった花瓶を床へと叩きつけた時、その音を聞き付けたのだろう燭台切が入ってきた。
「どうしたんだい!?凄い音がしたけ、ど……………主?花瓶を落としてしまったの?」
少女は答えない。
妙な様子に、燭台切は彼女の表情を窺おうとするが、それも叶わず。
長い髪が彼女の表情を隠し、妙な胸騒ぎを加速させる。
「……………疲れているのなら、部屋に戻った方がいいよ。片付けは僕がやっておくから」
だが、燭台切はそれを加州が居なくなったからだと結論づけた。
主の初期刀である加州が居なくなって早一ヶ月。主人は、日に日にその顔に影を落としていった。
「………………い」
「え?」
「うるさい。何優しい振りなんてしてるの?気色悪い。あんただって、私を笑っているんでしょう。だったら、そう言えよ。卑怯者」
ペラペラと少女の口から零れる言葉。
その言葉達に燭台切は目を丸くした。
そんな燭台切の前で少女は続ける。
「ほら、答えられない。本当に、私は何を勘違いしてたんでしょうね。あんた達となんて解りあえる訳もないのに。理解したような顔をして、同情なんてしないで。」
「主?違う、僕は………!」
「止めてよ!!聞きたくないの!!同情も憐れみも、もうたくさん………!!あぁ、気持ち悪い。」
(これは、誰が喋っているんだ?)
燭台切は内心呟いた。
少女が、棚の皿を引っ掻き回して壁に叩きつける。
(これは、誰だ?)
気が弱くて、人見知りで、よく気が回って、優しくて、そんな少女だった筈だ。
なのに、彼女は今、何をしている。
彼女の顔は嫌悪に歪んで、燭台切をまるでゴミの様に見る。
ただの鉄の塊。そう言われた気がした。
「おい!何事だ!!燭台切……………主!?」
走ってきた長谷部が何事かと主を見ている。
「あ、主………どうなさったんですか!?止めてください!!」
主を止めようとする長谷部。しかし、次の瞬間、彼は胸を押さえて踞った。
「ぐ、あ、っ…………な、ある、じ?」
「触るな。汚い」
術を使った………そう燭台切は理解し、ようやく頭の中が真っ白になった。
主が、術を使った。自分達を傷つけるために。
「そんな………」
声が口からもれて、崩れ落ちる。
何が壊れたのか。解らない。だけど、この瞬間、何かが壊れて、くだけちった。
「主!!どうしたんだ!!」
鶴丸の声。