第6章 第五章 タイムリミット&ストップタイム
ーーー屋敷に帰ると、彼岸花は救急箱を探していた。
「…………三十分探して気付いたけど、これこんのすけに聞いた方がいいのでは?あ、いや。寝てるか?」
式紙が寝るのかどうかは今一つ解らないが、少なくともこの時間から道場を訪ねて獅子王達を呼ぶよりはましなはずだ。
「こんなすけ、こんのすけー?」
小声で呼び掛けながら廊下を進む。
因みに、あの後、燭台切達とは別れました。
彼岸花が丁度道場前の廊下までたどり着いた時、こんのすけがふと、何処からか現れた。
「はい?何でしょうか彼岸花様」
「良かった。居ないかと思ったよ。」
「居りますよ。私はこの本丸の管狐ですから」
「そうだったね。」
適当に話を繋げていると、こんのすけがぎょっとしたような顔で、彼岸花の腹部を見た。
「その傷はどうされました!?」
「あー、説明するからその前に救急箱ってどこ?」
「救急箱、こんなところにあったんだ」
彼岸花とこんのすけにが来ているのはとある部屋の前。そのとある部屋というのは、最早恒例となった初めにこんのすけと隠れた部屋だ。
あの時と同じように、彼岸花は襖に背を預けてこんのすけが救急箱を取り出すのを見ていた。
「よっと………これでよろしいでしょうか?」
「うん。ちょっと見せてね……………そうだね、これでいいよ。」
十字マークが描かれた箱を開き、中を確認する。何とかなりそうだ。
「いやー。それにしても、以外だったな。救急箱あるんだ」
「………主様が来たばかりの頃、この部屋に置かれたのです。」
「そういえば、ここって誰の部屋だったの?」
前から気になっていた質問を口にする。彼岸花の視線の先には小さなドレッサーが。
ドレッサーがあるということは、女性の部屋なのだろうか。でも、小娘には自分の部屋があるような。移動した?
「ここは………初期刀である加州清光の部屋です。」
こんのすけが小さく呟いた声に、彼岸花の包帯を巻く手が止まった。
「ここが?………ふーん。」
呟いて、部屋をもう一度違う視点から見回す。
「救急箱は、不器用な主様が怪我したときの為に、加州清光が用意していたのです」
「………じゃあ、小娘は嫌われてた訳では無いんだ」
何処かホッとする自分を嫌だと思いつつも、彼岸花はそう言った。
「えぇ。寧ろ、最初のあの方は………」