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〈刀剣乱舞〉もしも、明日………

第5章 第四章 ドッペルゲンガーという概念は我々にはない


再びはえた鎌が、彼岸花の頭を狙う。骨の腕が腹部を撃とうとする。
ならば、対処はひとつ。
彼岸花は少しかかんで、折れた鎌をちゃぶ台返しのように持ち上げた。
「!なっ」
太郎太刀の間抜けな声は賛美。勢い余って彼岸花が持ち上げた鎌に何かがぶつかる音がした。
慌てて、もう一方からの攻撃に切り替えようとする太郎太刀だが、こればかりは素人が見たって間に合わないと解るだろう。
………彼岸花の刀が太郎太刀の心臓を、貫いた。
「っぐ、あ、なぁぁぁ…………!!」
「甘いんだよ。貴方は。」
彼岸花は刀を抜き去る。
力を失った太郎太刀は二歩、三歩よろけて、そのまま木に背を預けたまま、しゃがみこむ。
彼岸花はその側まで歩み寄ると、刀を振り上げた。
「確かにね、人には色んな面がある。貴方が見ていたのは、ひたすらに地獄だったのかもしれない。だけど、それでも誰かの命は重いんだ。貴方の命は、私が背負う。だから………もういいじゃん。眠りなさい。」
「………待って、く…だ、さい」
「なにかな?」
「………あ、の、屋敷、に、私の仲間が………い、ま…………。そ、のひとは、まだ、あ、きら、め……ない……………………」
「………解った」
太郎太刀の言いたいことは中々に大変な事実なのだが、死にかけた彼に何を突っ込むつもりもない。黙って聞いて、彼岸花は頷いた。
太郎太刀が、彼岸花の背後を見る。
彼岸花も釣られてみると、次郎太刀含め、皆が立っていた。
歴史修正主義者は全員居なくなったらしい。
「…………………次郎」
太郎太刀が息も絶え絶えに弟の名を呼ぶ。
「…………」
次郎太刀は少し迷って、太郎太刀の側に立て膝をついた。
「なんだい、馬鹿兄貴」
「…………すみませ、ん………わたしは、あ、なた……………を、まも、れな…………た」
「うん。」
「………ど、うか、このほんまる、では。しあわせに…………」
「……………うん。」
頷いた次郎太刀を見て、太郎太刀は何を思ったのだろう。
ただ、その顔に安堵した様な色を浮かべると、彼岸花を見た。
彼岸花は、既に刀を閉まっている。もう、長くはない。
だから、最後くらい、いいだろう。
そう思って、彼岸花は太郎太刀の元の腕を取った。
「………お休みなさい」
太郎太刀の右手を、両手で包む。
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