第4章 アナタ ト イキタイ【イケメン戦国】
謙信様はゆっくりとさんに近付くと、背後からその身体を両腕で絡め取る。
「は俺と離れたく無いそうだ。」
愉悦さを含んだ謙信様の言葉と、目の前に突き付けられた光景……
俺はパニックに陥ってしまいそうになりながらも、何とか状況を噛み砕いて1つの可能性を導き出した。
「さん、俺のせいで謙信様に脅されてるの?
俺の身を案じて、謙信様の言いなりになっているなら……」
そこまで言った所で謙信様が低く喉を鳴らして笑い出す。
「佐助、自惚れるのも程々にしろ。
この女は『俺』と離れたく無いと言っているのだ。
そうだろ、?」
………どういう事だ?
もう俺の頭ではこの状況に着いて行けない。
あからさまに狼狽える俺に向かって
「ごめんなさい……佐助くん。
私、謙信様を愛しているの。
謙信様の傍を離れたくないの。」
さんの口から一番聞きたくなかった言葉が紡がれた。
「い……いつから?」
「分からない。
多分、安土で初めて謙信様に会った時から。」
俺が謙信様と一緒に安土へ忍んで行ったあの時か。
「謙信様は全てを棄てたような冷たい目をしているのに…
それなのに……さりげなく私を気遣ってくれた。
そんな謙信様の事がどうしても忘れられなくて…
必要とされなくてもいい、
この人にずっと寄り添っていたい…そう思ったの。」
自分の身体から血の気が引いていく。
そんな事があるものなのか?
……これが運命って呼ばれているものなのか?
俺は科学で証明出来ないものなんか信用して来なかった。
だけど……その信用出来ないものをたった今、目の前で見せ付けられている。