第4章 アナタ ト イキタイ【イケメン戦国】
「おい、佐助。」
不意に名前を呼ばれて顔を上げると、座敷牢の格子の向こうに幸村が姿を見せた。
「幸村っ!」
俺は慌てて格子に縋り着く。
「どうだった?
さんは?」
「それが……」
幸村の複雑な表情に、俺の鼓動が逸る。
「何があった?
教えてくれ、幸村。」
俺が急かすと、幸村もどうしたものかと言うような様子で話し出した。
「先ず、安土からの追っ手が来た。」
「追っ手?」
「ああ、徳川家康と石田三成だ。」
徳川家康と石田三成だって?
日本の歴史を変えた最重要人物と言っても過言じゃない2人じゃないか。
ああ……会いたかった!
い…いや、今はそんな事を思ってる場合じゃない。
「そ、それで…さんは連れて行かれたの?」
「いや、は今…春日山城に居る。」
「ここに?」
「ああ。
実は謙信様も俺と一緒にを迎えに行ったんだ。
何か『あの女を手離す訳にはいかない』とか、
意味の分かんねえ事言っててさ。」
やっぱり謙信様もさんの所に行ってたんだ。
でも何故、謙信様がさんを?
「で、まあ当然の如く
謙信様と家康が一触即発になっちまったんだけど
が何とか抑えてくれて。
いやあ…あの女、凄えよな。」
その場面を思い出したのか、幸村は吹き出すように笑った。
「結局、安土からの追っ手も説得して追い返しちまった。」
「どうしてさんはそこまでして
春日山城に来たんだろう?」
俺が真っ当な疑問を口にすると、幸村の顔が急に曇る。
「直に分かる。
恐らく、此処に来る筈だから。」
幸村はそれだけを言うと、まるで逃げるみたいにそそくさと去って行った。
一体何があったんだろう?
ずっと感じていた胸騒ぎは晴れる所か、益々重く押し掛かってきた。