第26章 会津にて…【薄桜鬼】
主人に連れられ、皆が避難しているという宿へと急ぐ。
辿り着いた其処には湯治場で働いていた連中の大半が生き抜いていた。
主人と同様に皆が煤汚れて酷い有り様であったが、其れでも生き残った事を誇る様に瞳は輝いている。
「斎藤さんっっ……」
其の人集りの中から弾かれた様に立ち上がったのは。
迷う事無く俺に駆け寄るの身体を、俺も全身で受け止めた。
「っ……良かった。
無事で…本当に良かった。」
「斎藤さんも……
私との約束を守って下さったんですね。」
「ああ……
必ず、あんたの元に生きて帰ると誓ったからな。」
己の手が汚れるのも構わず、煤で真っ黒になっているの頬を撫でる。
其れが嬉しいのか、も俺の背に腕を回し弾ける様な笑顔を見せてくれた。
ふと気付けば、そんな俺とに皆が目を細めて温かい視線を向けている。
そして俺はを抱き締めた儘、其の大勢の顔を見渡し告げた。
「俺も此の先、あんた達と一緒に生きて行って良いだろうか?
会津で……いや、生き場所は会津で無くとも構わない。
を娶って、子を拵えて……
最期まであんた達と共に在りたい。」
俺の懇願を皆は当然の様に受け容れてくれた。
『儂等こそ最後まで会津の誇りを守り抜いてくれた斎藤さんと共に生きたい』とまでも言ってくれたのだ。
そう成れば……
『復興の為にも人出が必要だ。
さっさと稚児を作ってくれや。』
と、俺とは笑顔の皆に背を押される形で……
今は柔らかい布団の上で向かい合っている。