第26章 会津にて…【薄桜鬼】
「其れにしても……此の宿は良く残っていたな。」
「燃えたのは温泉郷の中程迄でしたから。
少しでも食い止めようと、
皆で必死に消火したお陰なんです。」
「そうか。
良く耐え抜いたな。」
心から漏れ出した俺の感嘆に、は誇らし気に微笑む。
暫く其の儘お互いを見つめ合った後、俺は問うた。
「今、こうして二人で居る癖に何を今更だと思うかも知れぬが……
あんたは此れで良いのか?」
不思議そうな表情で小首を傾げるの両手をやんわりと握り再度問うてみる。
「あんたは俺と生きてくれるのか?
此の先もずっと。
無理をしているならば、正直に……」
俺が言い終わらぬ内に、其の言葉はの唇によって遮られた。
「………っ!」
息を飲む俺に笑みを零したは、俺から逃れた両手で俺の頬を包む。
「無理なんてしていませんよ。
私……凄く嬉しいんです。
斎藤さんが帰って来てくれて、
皆と一緒に生きたいって言って下さった。
其れなら私は、其の斎藤さんの隣で
ずっと生きて行きたいんです。」
「……」
「でも一つだけ赦して下さい。
私はいつか、歳さんと再会したい。
いつか歳さんに
『斎藤さんと共に生きて幸せだった』と伝えたい。
だから……
これからも歳さんを忘れないで居る事は赦して欲しいんです。」
……此の女は何と可憐しい。
そんな細やかな願いを赦さない訳がないだろう?
「ああ……勿論。
俺もあんたと同じ想いだ。
いつか副長に、二人で報告に行こう。」