第26章 会津にて…【薄桜鬼】
その後、やはり俺が予想した通り新政府軍は再び会津を攻撃する。
会津藩士が籠城する鶴ヶ城陥落だけに留まらず、城下にも火の手が上がる様子を、俺は共に闘う仲間達と飯盛山の中腹から見下ろしているだけしか出来なかった。
当然、猛火は東山温泉郷の方向にも迫って行く。
湯治場の連中は逃げ果せただろうか?
は……無事だろうか?
直ぐにでも救いに向かいたい。
だが俺は副長が会津に残してくれた《会津新選組》を見捨てて動く訳にはいかない。
其れに俺達が動けば、新政府軍は容赦無く追って来るだろう。
頼む……
生きていてくれ、。
心の中で強く願いながら、俺は鬼神の如く戦い続けていた。
其れでも必ず《終い》は訪れる。
如来堂に立て籠もった新選組は『此処が決戦の地である』と捨て身で応戦したが、圧倒的な兵力の差に降伏するしか手立ては残っていなかった。
そう決めた俺に反論する隊士も居たが、無駄に皆の命を散らせる訳にはいくものか。
丑三つ時の闇の中、新政府軍の目を盗み如来堂を脱け出した俺達は散り散りに逃げた。
これから未だ抗っている会津藩士と合流すると言う者も居れば、土方副長と共に在りたいと何とか手を尽くして蝦夷へ向かうと言う者も居た。
俺は批難を受ける覚悟で世話になった人々を救いたいと東山温泉郷に向かうと告げたが、誰一人として俺を咎める者は居なかった。
『必ず生き残れ』
唯一其れだけを全員で誓い合い、《会津新選組》は此処に消滅した。