第26章 会津にて…【薄桜鬼】
の腹を綺麗に拭い、副長の丹前で丁寧に身体を覆う。
其れから自身の着衣を整えている間にが哀し気な声を絞り出した。
「斎藤さんも……なんですね。」
「…………?」
其の言葉の意図が分からず首を傾げる俺に、は自虐的な笑みを浮かべる。
「歳さんも……
頑なな迄に、私の中には射精さなかったんです。」
………そういう意味か。
俺は、の存在を護りたかったからこそ……
を穢したくなかったからこそ、外に射精した。
俺などの子種を残す訳にはいくまい…と。
「いや……誤解しないで欲しい。
決してあんたの存在を軽んじている訳では無いのだ。
俺は、明日の命すら危うい男だ。
そんな男があんたの中に…など……」
そうだ。
きっと副長も俺と同じ想いだったに違いない。
に《忘れ形見》を残して仕舞う事を必然的に避けたのだろう。
だが……俺は、副長とは違う。
「あんたに一つ、約束しておく。」
「………え?」
「俺は此の先も、命を賭けてあんたを護る。
何時か、俺が生き延びられる世に為った時……
そしてあんたが俺と共に生きても良いと思った時……
其の時こそは……
俺の子を産んで欲しい。」
俺を見上げる大きな瞳がじわじわと滲み出し、其の滲んだ涙が零れない様に俺はの目尻に指を這わした。
「返事を……聞かせてくれぬか?」
穏やかに問う俺に、も穏やかな笑顔で答える。
「はい……斎藤さん。
だから絶対に死なないで。
必ず、私の元に生きて帰って来て。」
「有難う……。」
もう此れ以上の言葉など必要無いと言わんばかりに、俺との唇はぴったりと重なった。