第26章 会津にて…【薄桜鬼】
「お前は此処に残る心算だろうが。」
「…………っ。」
余りにも図星を突かれ言葉を失えば、其れはもう肯定していると同じだ。
「副長……
俺は…………」
其れでも何とか声を絞り出す俺に、副長は一際穏やかな笑みを浮かべる。
「別に責めちゃいねえよ。
斎藤の想いも痛い程に理解は出来る。
農家上がりで何者でも無かった俺達に
武士という華々しい途を与えてくれた会津藩と容保公に
微衷を尽くしてえんだろ?」
いとも簡単に己の心持ちを暴かれれば、俺は静かに頷くしか出来ない。
「本来なら俺もそうしてえ所だ。
だがな、俺は………
近藤さんや総司に最期まで戦い抜く新選組を見せなきゃならねえ。
会津で立ち止まっちまう訳にはいかねえんだよ。」
「副長……
申し訳ありません。」
「ははっ……
斎藤が謝る事なんか何一つ無えよ。
俺の方が我儘言わせて貰ってんだ。
だから……会津を頼む。」
この夜、副長と俺は静謐に別離の盃を酌み交わし………
そして翌早朝、数名の隊士を残した副長は新選組を引き連れ唯真っ直ぐに会津を発って行った。