第26章 会津にて…【薄桜鬼】
然し、時代はそんな細やかな願いすら赦しはしなかった。
新政府軍は容赦無く会津に迄攻め入り、新選組は会津藩士と共に戦う事と相為る。
その間には副長も俺達を鼓舞し、導き、無理矢理にではあったが嘗ての姿を何とか取り戻していた。
母成峠での激戦を戦い終えた結果、旧幕府軍である我々東軍は再びの敗走を強いられ……
仙台……そして蝦夷を目指す。
その晩、俺は副長の部屋へ呼ばれた。
「遅い時間に悪いな、斎藤。」
「いえ。」
「お前に一つ、頼みたい事があってな。」
「………何でしょうか?」
俺は新選組入隊以来、俺自身の意思で常に副長と共に在った。
其れを今更他人行儀な…と不思議に思っていると、紡がれたのは予想もしていなかった言葉。
「の事を、頼まれてやっちゃくれねえか?」
「は……?
仰っている意味が、解せませんが……」
「そのまんまの意味だ。
お前は会津でを……
いや、湯治場の連中を護ってやって欲しい。」
無表情を装いながらも俺の鼓動は痛い程に高鳴った。
………副長は何に気付いている?
「湯治場の守護は残留する会津藩士に良く言い含めておきます。
俺は副長と共に蝦夷へ……」
「嘘吐け。」
優し気な笑みを湛えた唇から出た厳しい言葉に喉が詰まる。
そんな俺に目を細めた副長はやんわりと子供を説き伏せる様な口調で語り出した。