第25章 カレシと妻【幕末カレシ】
「この世界は豊かで便利で、何処も彼処もキラキラしててさ……
何よりも平和で安寧で。
はずっとこの世界で暮らしていたのに
俺なんかと一緒に居る所為で、
あんな不安定な時代で生きなきゃいけなくなった。
俺があんたを手放せない所為で、
は耐えてるんじゃないの?
俺の我儘の所為で……っ!」
ここで私は烝くんの口を、私の唇で塞いだ。
驚いて固まる烝くんの唇を数度食んでから顔を放せば、烝くんは何だか泣きそうな顔をしてる。
「我儘なんかじゃないよ。
私が選んだ道なんだから。
私が烝くんと一緒に居たいの。
もう烝くんと離れてなんて生きて行けない。」
「………」
「だから、お願い。
そんな風に思わないで。
そんな事……言わないで。」
「うん……ごめん。」
安心したみたいに微笑んでくれた烝くんに向かって私も笑みを返せば、その逞しい胸にそっと抱かれた。
「あんたの事……
必ず守るって約束するから。
………好きだよ。」
耳元で囁かれる掠れた声。
その後直ぐに私のワンピースの裾をたくし上げる烝くんの手を押し留める。
「ダメ!」
「何で?」
「だってほら……
今日はいっぱい歩いて汗もかいたし……」
「それで?」
「お風呂……」
「入ってからなら良いの?」
「う………」
核心的な笑みを浮かべる烝くんにドギマギしながら私はそっと頷いた。
「良いよ。
お風呂入ろ………一緒に。」
…………そりゃそうなるよね。
もうこれは拒否なんて出来ないと私は覚悟を決めたんだ。