第25章 カレシと妻【幕末カレシ】
たっぷり時間を掛けた食事を終えて、私達は漸くホテルにチェックイン。
五つ星ホテルのロイヤルスイートに宿泊出来るなんて、私も初めての経験だからウキウキしていたけれど……
烝くんのはしゃぎっぷりは想像以上だった。
「ねえ……履物は脱がないの?
床、こんなにふかふかなのに?」
「何これ?
え……そふぁ?
この箱の中に誰か忍んでたりしない?」
「は……?
此処が風呂?
何でこんなに広いの?
此処で生活出来るじゃん!」
部屋中を一頻り探索しながら烝くんが上げる声に、私はずっと笑いっ放し。
烝くんって本当に子犬みたいだな。
嬉しくて尻尾を振りながらはしゃぎ回る可愛らしい子犬そのものだよ。
そんな姿を目を細めて見つめていると、烝くんはバルコニーへ続く大きな窓の前で立ち止まり、私もその隣へそっと寄り添った。
京都の街の灯りを見下ろしながら何度も重ねるだけのキスを交わす。
その内にもうお互いしか見えなくなって真っ直ぐに見つめ合うと、妖艶だった烝くんの瞳にはじわじわと翳りが滲み出した。
「烝くん…どうかしたの?」
「は……良いの?」
「え……何が?」
「は……本当に俺で良いのかなって……」
何を言いたいのか分からず私が首を傾げていると、烝くんは視線を窓の外へ向けて淡々と語り出す。