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孤独を君の所為にする【歴史物短編集】

第25章 カレシと妻【幕末カレシ】


結局ガイドのおじいさんは新撰組がどれ程に格好良かったのか、その生き様がどれ程に見事だったのかを聞かせてくれただけで、新撰組の《哀しい最期》までは語らなかった。

烝くんの真っ直ぐな瞳に何かを感じ取ってくれたのかもしれない。


お話が終わり大広間を出ようとしていた私達に

「もし……」

と、おじいさんが声を掛けて来た。

振り向いた私と烝くんに向き合ったおじいさんは穏やかな笑みを湛えて聞いてくる。

「御二人は新撰組がお好きかね?」

「はい!」

満面の笑顔で答える私と、小さく頷く烝くん。

「では、この八木邸の隣にある壬生寺にも行ってみると良いですよ。
 壬生寺の境内では沖田総司が近所の子供達と
 良く一緒に遊んでいたらしい。
 人斬りと呼ばれ怖れられた沖田総司だが
 本当は心根の優しい無邪気な青年だったのかもしれないね。」

優しい眼差しでそう言ってくれるおじいさんに、烝くんはまるで自分が褒められたかのように

「ありがとう…ございます。」

今日一番の笑顔でお礼を言った。


そして私と烝くんはのんびりと壬生寺を散策する。

その間に烝くんはポツリポツリと自分の想いを紡ぎ出した。

「俺達の事をあんな風に優しく語ってくれる御仁が
 この時代にも居るなんて……
 正直、驚いた。」

「そうだね。」

「でもさ………
 何か嬉しい。」

そう言って含羞む烝くんに私の胸もじんわり温かくなる。

「近藤さんや土方さんにも教えてやりたいな。
 新撰組を讃えてくれる御仁が未来にも居るって事。
 勿論、慶喜様にも……
 喜んでくれるかな。」

「うん。
 絶対に喜んでくれるよ。
 帰ったら皆に話してあげてね。」

「まあ……
 沖田さんが無邪気かどうかは訂正したい所だけど。」

「あはは……
 酷いな、烝くん。」

こうして一杯話して、一杯笑い合いながら私達は壬生を後にした。
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