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孤独を君の所為にする【歴史物短編集】

第25章 カレシと妻【幕末カレシ】


そうして到着した壬生では新撰組の屯所跡、旧前川邸と八木邸を見て周る。

近藤さんや土方さんの部屋があった旧前川邸は外観だけしか見られないけれど、八木邸は屋内も観光出来るようになっていた。

平日だからかな……観光客も殆ど居なくて、2人でゆっくりと各部屋を見ていく。


「凄いや……
 百五十年以上経ってるのに
 こんなにちゃんと残ってるんだ。」

烝くんは嬉しそうでもあり、寂しそうでもあり、複雑な表情で小さく呟く。

だから私も心を込めて返事をした。

「それだけ新撰組がずっとずっと大切にされているって事だよ。
 現代でも新撰組を尊敬して憧れている人が多いの。
 嬉しいね。」

「うん……嬉しい。」

こうして烝くんと見つめ合って笑っていられる今が、本当に幸せだな。


そして大広間ではボランティアでガイドをしてくれるおじいさんの話を聞いた。

名調子で滔々と語られる新撰組の歴史には、烝くんも真剣に耳を傾けている。

「どうしてこの翁はこんなに新撰組に詳しいの?」

なんて驚く烝くんに

「本物の山崎烝ですって名乗ってみたら?
 おじいさん、ビックリして腰を抜かしちゃうかも。」

なんて冗談を言ってみると、烝くんはちょっと考えてから言った。

「…………止めとく。
 可笑しな人だと思われそうだし。」


それからもガイドのおじいさんは近藤さんや土方さんについても色々と聞かせてくれて

「この鬼の副長と呼ばれた土方歳三というお人は
 そりゃあもぉーイケメンで……」

という一節に、私と烝くんは顔を見合わせてから盛大に吹き出してしまったんだ。
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