第25章 カレシと妻【幕末カレシ】
「うーん…まだホテルにチェックインするには早いし。
どうしよっか?」
そう問い掛けてみても烝くんは首を傾げてるだけで……
「烝くん?」
「なんかの言ってる事が理解出来ないんだけど。」
「……え?」
「『ほてる』に『ちぇっくいん』とか……」
あ…そっか。
私が幕末にタイムスリップした時、周りの人達が何を話しているのか良く分からなくて不安だった。
それなのに新撰組の皆や烝くんは馬鹿にしたりもせずに私を導いてくれたんだ。
じゃあ私も烝くんを不安にさせたりなんかしないから。
「あのね、まだ宿に入るまでには時間があるって事なの。
だからどこか行ってみたい所はある?
どこでもいいよ。
烝くんの行きたい場所で構わないから。」
少しホッとしたような表情の烝くんは、遠慮がちに予想外の提案をする。
「…………壬生。」
「壬生?」
「うん。
此処、京なんだよね?
新撰組の屯所が在った場所に行きたい。」
そうだよね。
どこに行きたいなんて聞いたって烝くんはこの時代の事を何も知らない訳だし、それに自分達が生きていた場所を見たいって気持ちも痛いほど分かるよ。
それに本物の新撰組隊士と現代の壬生を観光出来るなんて………
すっごく素敵!
「分かった。
壬生には今も新撰組の屯所が残ってるんだよ。」
「ほんと?」
「本当だよ!
早速行ってみよう!」
「うん。」
キラキラした瞳で笑ってくれた烝くんに、私も嬉しさを滲ませた笑顔で大きく頷いた。