第24章 蠱惑的遊戯【イケメン戦国】
「光秀。」
信長様の低く落ち着いた呼び掛けに全員がその人へ視線を向けると、光秀さんは相変わらず腰を下ろし片膝を立てて盃を傾けていた。
その表情は実に不敵な笑みを湛えていて……
口角を上げた唇からは予想外の言葉が紡ぎ出される。
「もう……充分でしょう。
石田三成の聡明さ、豊臣秀吉の懇篤。
伊達政宗の雄々しさに徳川家康の先見の明。
私には其れらに勝る物など、何一つ持ち合わせてはおりません。」
俺とさんだけが知っている織田信長と明智光秀の因縁。
それが頭の中を過り胸がざわついたけれど、何故か信長様は愉しそうに笑った。
「くくっ……
貴様は本当に面倒臭い奴であるな。
の身体を案じていると、何故素直に言えぬ。」
……そう言う事か!
光秀さんはさんにこれ以上無理はさせたくないって考えているんだ。
さんと、さんのお腹にいる子を気遣って。
あー……流石だよ、信長様。
光秀さんのその思いに直ぐ気付くなんて。
ほら、それが証拠に光秀さんも少し顔を赤らめて気不味そうにしてる。
「ふん……
俺が彼是と美辞麗句を並べるよりも
本人の口から強請った方が良かろう。
そうだろう……。」
目の前で横たわるさんの頬をそっと擽り信長様が促すと、さんも自分のお腹に手を当てて光秀さんに柔らかく語り掛けた。
「光秀さん……
貴方の何事にも屈しない《強さ》と
どんな時でも揺ぎ無い《優しさ》を
この子に……与えてくれませんか?」