第23章 Sad Monster【ドリフターズ】
現在は廃棄物(エンズ)が根城にしているカルネアデスの北壁。
しかし俺は他の廃棄物(エンズ)共と連む気には成れず、北壁に程近い森の中で過ごす事が多い。
その日もすっぽりと闇に包まれた中、大樹の根元の草むらにごろりと横になる。
次に島津と相見えた時、俺は全うに戦えるのだろうか……
《化物》に成り果ててまで無様に迷う自分を嘲笑しながら眠りに堕ちた。
「………っ!」
突然、身体に感じた衝撃で目を覚ます。
まだ陽は昇っていないが、辺りは随分と明るくなっていた。
恐る恐る寝転がったまま自分の脇へ視線を向けて見ればそこには………
女が一人、ぐったりと横たわっている。
「何だ……此奴は?
生きているのか?」
口元に手を当て呼吸を確かめる。
どうやら息はある様だ。
かなりか細い息遣いだが、何故か俺は安堵していた。
着ている物は所謂、小袖。
それなりに仕立ての良い物であるのは俺にも分かる程だ。
髪は結われておらず、豊かな黒髪が流れるように広がっている。
年の頃は十七、八か?
…………此奴は《いつから》送られて来た?
何よりも女は全身がずぶ濡れで、顔色は紙の様に白く、唇は全く色味を無くしていた。
「これは……不味いかもしれんな。」
そう呟いた俺が女の肌に触れると、案の定氷の如く冷え切っている。
どうしたものか………
暫くの躊躇の後、俺は一つ大きく息を吐く。
「仕方在るまい。」
そして女の着ている物を全て剥ぎ取り自分も全裸になると、その冷たい身体をすっぽりと包み込む様にして再び横になった。