第23章 Sad Monster【ドリフターズ】
そして《化物》の俺が出会したのは『島津豊久』
俺が憎んでも憎んでも飽き足らない薩奸。
あの島津十字の家紋を目にするだけで、身体中の血が沸騰する。
『島津豊久』は俺よりも二百五十年程前に天下分け目の大戦さで死んでいるのだから、俺からの恨みをぶつけられる事は理不尽だろう。
だが彼奴は笑って……
「俺(おい)らの子孫が何ぞ仕出かしてしもうた様だの」と《嬉しそうに》笑って……
俺を真正面から受け容れやがった。
眩しい程の戦国武者。
当に武士(さぶらい)。
俺が為りたくて為りたくて……
命懸けで戦い続け、焦がれ続け、漸く手にした途端に失ったもの。
髪一筋、爪一片、敵の首を獲るという意志そのものを滲ませた様を見せ付けられれば、自分との埋められない《差》を思い知らされる。
だからこそ、負ける訳には行かなかった。
負ける気など無かった。
負けたく無かった。
そんな滾りのままに斬り合い殴り合った後、彼奴は俺の事を《日ノ本の侍》と称した。
『日ノ本の侍』
そのたった一言で俺は揺らぎに揺らいで、《化物》に成り下がった自分を嫌悪し始めている。
なあ、総司……
勇さんも……
何故、来てくれないんだ?