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孤独を君の所為にする【歴史物短編集】

第22章 其の女【薄桜鬼】


「…………っ。」

息を飲む俺を他所に、斎藤の言葉は続く。

「殺したのは薩摩藩重臣。
 以前より焦臭い動きを見せていた男で
 新選組だけで無く、見廻組も警戒していた人物です。
 其の男の常宿から尋常で無い叫び声が聞こえた為、
 見廻組が踏み込んだ所……
 此の女が男に馬乗りになって小太刀で滅多刺しに為ていた…と。」

ああ……俺と懇ろになって情報を寄越せとを脅していた野郎か。

俺に斬ってくれと言っていた癖に、お前は自分で……。


「其れで見廻組が捕縛したって訳だな?」

斎藤は小さく頷く。

けど、其れが何だって新選組に?

次は俺の不審に歪む表情に気付いた総司が、の前に屈み込んで柔らかい口調で語り出す。

「僕等も薩摩藩士の動きには敏感だったからね。
 偶々此の人が捕まる所に出会したんだ。
 人を殺めたと言っても、相手は薩摩の重臣でしょ?
 当然、見廻組に取っても殺された男は敵だ。
 自分達の代わりに手を降してくれた形になる彼女の扱いに
 見廻組も困っててさ。
 だから、僕と一君が引受けて来たって訳。
 一寸袖の下を渡したら、あっさり新選組に任せてくれたよ。」

「何故、お前達が……」

至極当然な俺の疑問に答えたのも総司だった。

「だって……
 土方さん、此の人の事が好きなんでしょ。」


……ったく、そんなにきっぱり言われちまえば、ぐうの音も出ねえよ。

さて、どうしたもんか…と考え込む俺の背後から斎藤の言葉が投げ掛けられる。

「此の女の処遇は副長に任せます。」

「そうだね。
 僕と一君は此れで御役御免って事で。」

そう言った総司と斎藤が揃って土蔵を後にしようとした時、今迄俯いた儘で微動だにしなかったが顔を上げ悲痛な声を上げた。


「駄目っ!
 此の人と私を二人きりにしないでっ!!」
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