第22章 其の女【薄桜鬼】
「副長……
副長、起きて下さい。」
「あー……」
落ち着いた低い声に目を覚ますと、もうすっかり陽は昇りきっていた。
横になった俺の脇にきっちり正座して居る斎藤に気付き、何時の間に屯所に戻ったんだと思い辺りを見廻してみたが、此処は未だの店だった。
を滅茶苦茶に抱いた座敷で転がる俺には布団が掛けられていて、脱ぎ散らかした着物は丁寧に畳まれている。
そして座卓の上には湯気を立てている美味そうな朝飯。
だが、の気配は何処にも感じられない。
「斎藤……
俺以外に誰か居なかったか?」
寝起きの掠れた声で問い掛ける俺に、斎藤は相も変わらず生真面目に答える。
「いえ。
昨夜から戻らない副長を案じて俺が此の店に入った時には
既に副長一人でした。」
「お前は何時頃来た?」
「四半刻程前ですが。」
「そうか……」
其れより前には此処を出て行っちまったって事か。
俺の身体に布団を掛け、俺の着物を畳み、俺の為に朝飯を拵えて。
尻の穴まで晒して、あれ程乱れ捲った後だ。
流石に俺と顔を合わせるのは気不味いのかもしれねえな。
何処に行ったのか見当も付かねえが、の話し振りじゃあ此の店以外に戻る場所もねえ筈だ。
が落ち着くのを待ってから、また飯を食いに寄るか。
取り敢えず、俺も一度は屯所に戻らねえとな。
「心配掛けて悪かったな、斎藤。」
「いえ。
副長がご無事であれば俺は其れで。」
「折角用意されてる朝飯だ。
この店の料理は美味いぞ。
お前も一緒に食って行けよ。」
「はい。
ですが、副長………」
斎藤は何故か俺から目を反らし、僅かに頬を赤らめて羞じらっている。
「何だ?」
「あの……
下帯だけでも……
身に着けて貰えれば………」
そう言われて、布団を剥いで胡座を掻いている自分の身体を見下ろしてみれば……
俺は素っ裸だった。