第22章 其の女【薄桜鬼】
「大丈夫か?」
右腕での肩を抱え、左手で乱れた前髪を整えてやりながら問うと
「平気。
一発平手で叩かれただけだから。」
と、気丈に微笑んだ。
それから
「ああ、犯られてはいませんよ。
こんな年増じゃ乱暴はされても貞操は無事なんて……
皮肉ね。」
なんて、態とらしく戯けて見せる。
確かに。
男に犯された様子は感じられない。
だからって「そりゃ良かった」なんて言える訳ねえだろうが。
何よりも、の美しい顔に疵を付けた奴が許せねえ。
「誰にやられた?」
「誰って……」
「手前ぇ、何を隠してる?
俺には言えねえ事か?
何か厄介事に巻き込まれてるなら正直に言ってくれ。
俺を頼れよ、。
新選組の副長を見縊るな。」
俺の腕に抱えられたの視線と、見下ろす俺の視線が真っ直ぐに絡み合った。
暫くの無言の後、は小さく息を吐くと
「もう誤魔化すのも限界ですね。
全部……話しちゃいましょうか。」
自分に言い聞かせる如くそう言って俺の腕の中から脱け出し、少し距離を取った場所にぺたんと座る。
それから……心内を絞り出す様なの独白が始まった。