第22章 其の女【薄桜鬼】
斎藤の報告を聞いて直ぐ、俺は一人で屯所を飛び出した。
自分も一緒に行くと言う斎藤を「先ずは俺だけで様子を探って来る」と押し留めて。
勿論、薩摩藩士を捕縛すると成れば新選組として大々的に行う可きだろう。
だがその捕物の中にを巻き込むのは避けたかった。
いや、やはりも一味なのかもしれねえ。
そうであれば尚更、を取り圧えるのは俺自身の手で遣りたかったんだ。
兎に角、何にせよ真っ先に状況をはっきりさせてえ。
の店に着くと、また提灯に火が入っていない。
しかし、暖簾は出ているし店の中には明かりが灯っている様だ。
まだ薩摩藩士が居るかもしれねえ。
俺は息を殺し、忍び足で店へ近付く。
入口の障子戸に耳を寄せ中の様子を伺ってみたが、声も聞こえなければ気配も感じられない。
斎藤の報告がいい加減なもんじゃねえ事は分かっている。
とすれば、集っていた薩摩藩士共は既にこの店を後にしたって寸法か?
其の時………
「………んぅ。」
店の中からの微かな呻き声が聞こえた。