第22章 其の女【薄桜鬼】
しかし……選りにも選って薩摩だとはな。
言う迄も無く、会津藩と薩摩藩は因縁の相手。
和協していたもんに叛逆されたとなりゃ尚更だ。
会津藩お抱えの新選組にとっても其れは同様で、隊士の中には薩摩の人間というだけで斬り掛かる奴も居る程だった。
俺とが出会ったのは偶然………
いや……本当にそうなのか?
何所か作為を感じる事は無かっただろうか?
だがの方から俺に押詰った事など一度も無い。
そうであったならとっくに俺はを抱けている筈だ。
が俺から何か情報を引き出す為に、薩摩藩の息が掛かった人間じゃねえのは確かだろう。
本当に偶々……って奴か。
「新選組の副長さんが薩摩の女なんかと懇意にしてるなんて
世間に知られたら問題かしら?」
「まあ…良い印象では無えだろうが。」
「やっぱりそうですよね。
一寸残念だけど……
今迄ご贔屓下さってありがとうございました。」
あっさり俺との接触を断とうとするが、薩摩の手下で在る筈も無え。
俺は逆に、の潔い態度に胸を撫で下ろしていた。
「別に飯を食いに尋ねる位、問題無いだろ。
そんなの只の客じゃねえか。
又、ちょくちょく寄らせて貰う。」
「良いんですか?」
「ああ、構わねえ。」
少し身体を弾ませて「嬉しい」と笑う。
全く……此奴と離れられねえのは俺の方だぜ。