第22章 其の女【薄桜鬼】
『もじょか』
其れは薩摩言葉で『可愛い』の意味だ。
余りにも自然な流れで薩摩言葉を呟く様は「違う」と言われた所で、到底信じられる筈も無え。
案の定、俺に指摘されて仕舞ったとばかりにが表情を歪めた一瞬を俺は見逃さなかった。
だが直ぐに何時も通りの柔らかな笑顔に戻ったは
「やっぱり駄目ね。
お国言葉ってつい口を出ちゃう。
田舎者だってばれないように頑張ったんだけどな。」
そう言って、億劫そうに立ち上がる。
「手前ぇ、薩摩の女が何故一人で京に居る?」
「特に理由なんてありませんよ。
ほら、私……天涯孤独だって言ったでしょ?
どうせ独りぼっちなら人生一度くらいは京の都で
華やかな物や人に囲まれて暮らしたいなぁ…なんて。
田舎で燻ったまま終える惨めな人生なんて真っ平。
土方さんだってそうでしょう?」
「ああ……まあ、な。」
の言っている事が理解出来ない訳じゃ無え。
確かに俺だって農家上がりのしがない薬売りで人生を全うするなんて御免だった。
己の力で、《武士》として一旗揚げたくて、会津藩の庇護が此れ幸いと勇んで入洛したんだ。