第22章 其の女【薄桜鬼】
「店……休んだのか?」
「ええ。
一寸急用が出来てしまって。
それで余った魚をこの子に………
あっ…もしかして食事に来て下さったんですか?」
「まあ……そうだが…」
「ごめんなさい!
良かったら今からでも何か拵えましょうか?」
「いや、良いんだ。
気にするな。」
「では、また明日にでもいらして下さいな。
お待ちしていますから。」
「ああ。」
俺を見つめ艶っぽく含羞んだは、また仔猫に視線を落とした。
「店があるから飼う訳にはいかないし。
お前……一人でも頑張って生きて行くのよ。
負けちゃ駄目だからね。」
自分自身へ言い聞かせてるみたいな物言いに、俺の視線は仔猫ではなくの横顔に釘付けになる。
こうして二人で肩を並べて屈み込んでいる穏やかな時間が、仲の良い夫婦みてえだなんて……青臭い小僧の考えそうなこった。
そんな自分が情けないやら照れ臭いやら………
仔猫の背をそっと撫でるの細い指に見惚れていたその時、が何気なく呟いた一言に俺の全身が総毛立った。
「ふふ……もじょか。」
「……
お前……薩摩の出か?」