第22章 其の女【薄桜鬼】
数日後………
気付けば俺の足はまたあの店へ向かっている。
『会わない方が良い』とか言った舌の根も乾かぬうちに此れだ。
一体自分はどうしちまったんだろうと呆れつつも、に会えると思えば其の足取りは軽い。
だが視線の先に捉えたの店は辺りが薄暗くなっているにも関わらず、提灯に火も入っていなければ暖簾も出ていない。
「………休みか?」
存外に気落ちしている自分に嘲笑が漏れる。
の都合一つで顔を見る事も叶わねえ自分の存在が、どれだけちっぽけなのか痛い程に思い知った。
「仕方ねえ……」
溜息と一緒にそう吐き出し踵を返そうとした俺は、店の脇の暗がりに踞っている人影に気付く。
………不逞の輩か?
此の近辺は治安が良いとは言えねえし。
何にせよ、に危害が及びそうな芽はいの一番に摘んでおかねえと。
左腰の兼定に手を掛け其の影に近付くと、俺は冷静に声を掛けた。
「手前ぇ、何してやがる?」
心底驚いた様子で顔を上げた其の踞っている人影は……
「……土方さん!?」
「か!?
お前こんな所で何してる?」
「店の外でこの子が鳴いてるのが聞こえて。」
そう言うの足元では、三毛の仔猫が必死で魚に食い付いている。
「迷い猫か?」
「母猫と逸れちゃったのかな。
お腹空いてたんだよね。」
愛おし気に目を細めているの横へ俺も屈み込んだ。