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孤独を君の所為にする【歴史物短編集】

第22章 其の女【薄桜鬼】


結局その晩もと懇ろになる事は叶わず、大人しく屯所に戻った俺は総司と出会す。

「あれ……
 土方さん、夕飯は?」

「食って来た。」

「ふーん……
 最近多いよね、外で済ませて来るの。
 隊士の規律には厳しい癖にさ。」

「別に構わねえだろ、それ位。
 酒を飲んでる訳でも無えんだし。」

「まあそうなんだけどねぇ……」

俺は含みを持たせて口角を上げる総司を睨み付けた。

「……何だよ?」

「ううん。
 何か他に理由があるのかなぁと思って。」

「……無えよ。」

………ったく、相変わらず鋭い奴だ。

此の侭総司に付き合っていたら俺の本心を悟られちまう。

俺は総司の追及を吹っ切る様にしてその場を後にした。


自室に戻りごろんと横になると、さっき聞いたの言葉が頭の中をぐるぐると回る。


『私ね……
 天涯孤独の身なんです。』


もう父御も母御も鬼籍に入るって事か?

兄弟姉妹も居ねえのか?

あの年で此れ迄所帯を持とうとした男も居なかったのか?

女一人で店を持ち切り盛りするなんて、並大抵の苦労じゃねえだろう。

それこそ都合の良い男に縋っちまえば、楽になるんじゃねえのか?

の器量であれば、そんな男はごまんと居ただろうに。


「ああっ…くそっ……」

どうやってもへの想いが払い除けられねえ。

おいおい……

俺は泣く子も黙る新選組の鬼副長だぜ。

其れが懇ろでも無い女の一挙一動で心中穏やかじゃねえなんて……

本当に情けなくて、近藤さんにも顔向け出来やしねえよ。

「もうには会わない方が良いのかもな……」

なんて無意識に呟いてから、俺は何とか眠りに付いた。
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