第3章 昨夜泣いた君と【薄桜鬼】
「……親父さんは知ってたのか?」
俺は恐る恐る聞いてみるものの、優里は何でも無い事の様にあっけらかんと答えた。
「知らなかったみたい。」
「え……じゃあ………」
「でもね、父は笑ってた。
今更俺の娘じゃ無いって言われた所で
どうしようも無いだろ…だって。
それに……お前がその男と一緒になるなら
今度こそ本当に俺の娘になるって事だから
結局何も変わらないって言ってくれたんだ。」
「その男……って…」
優里に聞こえて仕舞いそうな程に俺の鼓動が高鳴り、問う声も震えちまってる。
そんな俺を落ち着かせる為なのか、優里は俺の手を優しく包み込み言った。
「平助の事だよ。」
ああ……認めてくれて居たんだ。
これから先も生涯お互いに顔を合わせる事は無いだろうけど……もう充分だ。
充分過ぎる程、俺は幸福だったんだ。
「お前がその男を選んだのは、
やっぱり俺に似ているからだろうな…なんて
父は満足気に笑ったのよ。
本音を言うと全然似てないんだけど…。
平助はきっとお母様似なのね。」
全く……どうしてそう次から次へと嬉しい事を言ってくれるのかな。
この先の俺の人生で与えられる幸福は、全てお前の口から紡がれる事になる気がするよ。