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孤独を君の所為にする【歴史物短編集】

第3章 昨夜泣いた君と【薄桜鬼】


「ん……優里………」

「平助……んんっ……ふ………」

手近な出合茶屋に飛び込んで部屋に入った途端、お互いの名前を囁きながら口付けを繰り返す。

着物の上から身体中を弄り、舌を絡め合うだけで達っちまいそうだ。

「平助……あっ………待って……話を………」

夢中になって求め続ける俺の胸を、優里の両手が押し返した。

「ん……ああ、そうだよな。」

俺の手が名残惜しそうに優里の身体を手離し、向かい合って腰を下ろす。

俺だってお前が『妹』じゃないってちゃんと確認したい。

俺の想いを覚ったのか、優里は早々に語り出した。


「江戸に戻ってからも、どうしても平助の事が忘れられなくて…」

あの最後だと思っていた夜は俺の事を『貴方』と呼んだ癖に、今はまた『平助』って呼んでくれるんだな。

そんな事が自分でも驚く位に嬉しくて、俺は頬を弛めて優里の話を聞く。

「ずっと鬱ぎ込んで居た私を見兼ねた母が話してくれたの。
 お前は父様の子じゃ無い…って。」

「はあ?」

想像もしていなかった話に俺が目を丸くすると、優里は愉快そうにふふ…と笑った。

「驚くでしょ?
 母は父の所に嫁ぐ前にとても愛し合っていた人が居て…
 その人とは複雑な事情で結ばれ無かったけれど、
 父の元に来た時には既に私がお腹に居たんだって。」

そういう事情なら、確かに俺と優里が兄妹で無いのは明らかだ。

「その事実を母は墓場まで持って行く覚悟だったけど、
 自分が隠し事をしている所為で苦しんでる娘を見てるのは
 辛過ぎるからって…話してくれた。」

「そうか……お前も複雑だよな?」

「うん……でも平助だって同じでしょ?
 それに勿論私も驚いたけど、
 何よりもこれで平助と一緒に居ても良いんだって思ったら
 もうそんな事はどうでも良くなっちゃった。」

舌をぺろりと出して笑う優里の仕草が堪らなく可愛い。

いや、それはそれとして……優里の両親は大丈夫なのか?
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