第3章 昨夜泣いた君と【薄桜鬼】
少し身を乗り出した優里の指先が、愛おしそうに俺の顔を撫でる。
俺はもう堪らなくなってそのまま優里を押し倒し、その可愛い顔をじっと見下ろした。
「お前……泣いたか?」
その時になって優里の瞼が少し腫ぼったい事に気付く。
「うん、泣いたよ。
平助と兄妹じゃ無いって分かってからは毎晩泣いてた。
嬉しくて、早く平助に会いたくて、ずっとずっと泣いてた。」
あの夜は頑として泣かなかった癖にさ。
これからお前が泣く時には、必ず俺が側に居てやるからな。
「じゃあ俺がもっとお前を泣かせてやるよ。
優里……俺と一緒になってくれるか?」
「うん。」
優里は大きく頷いて、満面の笑みを浮かべた。
「何だよ。
これでは泣かねえのか?」
「泣いて欲しいの?」
「そういう訳じゃねえけど……
お前を泣かす事が出来るのは、俺だけで有りたいんだよ。」
「じゃあ……
私を平助の子供の母親にしてくれたら…泣いてあげる。」
え…………それって………
「任せとけ。
………四人だぞ。」
「任せといて。
………四人ね。」
額を合わせてお互いにくすくすと笑う。
どうやら今夜の俺達は、朝まで眠れそうにねえな。
優里……お前をどうしようも無く愛してる。
これから先、俺達にどんな苦難が訪れたとしても、お前と一緒なら簡単に乗り越えられる気がするよ。
どうせお前はそんな時も泣かないんだろうな。
笑顔のまま俺に寄り添ってくれるんだろうな。
次にお前が涙を流すのは、この腹に俺の子供が宿った時であれば良い。
お前からそれを告げられた時には、きっと俺も泣いちまうだろうけど
………許してくれるよな?
「目……瞑れ。」
真っ直ぐに俺を見上げて居た優里の瞼がそっと閉じられたのを確認して、俺はゆっくりと口付けから始める事にした。
了