第21章 真っ直ぐな寄り道【イケメン戦国】
振り向いた先に居たのは……光秀。
庭の大杉に身体を預け両腕を組んだ光秀が、薄ら笑いを浮かべて俺を見遣って居る。
「お前っ……
どうやって入って来た?」
「何……出て来た使用人に
此処の主人に呼ばれたと伝えたら、
あっさりと通されたぞ。」
「俺は呼んでなんかいねえ!」
「だが……
俺の事を考えていただろう?」
「………っ!」
図星を突かれて言葉に詰まる。
そんな俺に、光秀はゆったりとした足取りで近付いて来た。
「多くを語る心算は無い。
政宗に授けたい物があってな。」
「……授けたい物?」
「此れだ。」
そう言って光秀が袂から取り出したのは、一包の薬包。
「……何だ、其れ?」
「媚薬だ。」
…………媚薬!?
何だってそんな物を俺に?
「俺があの小娘相手に使おうと思っていたのだがな……
政宗に譲ってやろう。」
光秀がに使う心算だった?
じゃあやはり光秀もの事を……
いや、でも何だって其れを俺に譲るんだよ?
不審さも顕に表情を歪める俺に、光秀は更に笑みを深くした。
「俺よりもお前の方が急を要しているだろう?
政宗ならばあの小娘の口に『此れ』を放り込むのも容易。」
確かに……
俺が拵えた食い物ならば、は何の疑いも無く口にする。
知恵を絞る必要も無く、に飲ませる事が出来るんだ。
結局俺の抱えていた想いは、光秀にはお見通しだったって訳か。
まあ、光秀相手には匆々誤魔化しが効くとは思って無かったが……。
けど……
「お前もの事が……」
「おっと……
その名を口にするのは野暮と言う物。」
俺の言葉を遮り、俺の手に薬包を握らせた光秀は立てた人差し指を笑みを湛えた唇に添えて踵を返す。
そして歩調を緩めぬまま
「お前の好きに使え。
但し、一つ忠告だ。
其れは身体に悪い物では無いが、かなり強力だぞ。
使った際には、最後まで面倒を見てやる事だな。」
そう囁き、暗がりにその姿を消した。