第21章 真っ直ぐな寄り道【イケメン戦国】
泣いているのを俺に見られたのが気不味いのか、は無言で光秀の胸に顔を埋める。
その姿を隠す様に、光秀もの身体を更に力強く抱き締めた。
此れって……………そう言う事なのか?
目の前の光景を受け容れられない自分と、現実を叩き付けられて動揺する自分。
その両方が鬩ぎ合い固まったまま動けない俺に、光秀が低い声で問い掛ける。
「……何か、用か?」
「いや……何でもねえ。」
「そうか。
ではさっさと去ね。」
「あ…ああ……
邪魔して悪かったな。」
とことん情けねえが、俺は薄ら笑いを浮かべて踵を返すと、目に膠着いたの泣き顔を振り切る様に早足でその場を後にした。
御殿に戻り、自室の畳にごろりと横になる。
まさか、光秀だったとは……な。
光秀だけは有り得ないと思っていた自分の浅慮さが滑稽で仕様がねえ。
と光秀……
どう考えたってこの二人は対極だ。
例えるなら陽と陰。
…………だからこそ、か?
己に無い物に惹かれるってのは世の常だ。
そうであればと光秀が求め合うのも………
「……くそっ!」
頭の中を廻る想像を掻き消し、飛び起きた俺は裸足のまま中庭にある井戸へ向かう。
其処で上半身を肌蹴ると釣瓶桶から直接ざばざばと水を被った。
だがそれを何度繰り返した所で、腹の底から湧き上がる醜悪な熱は収まる筈もねえ。
「くそ……」
誰に対してなのか、もう一度悪態を吐いた時……
「見て居られんな。」
背後から聞こえた声に身体を弾ませた。