第21章 真っ直ぐな寄り道【イケメン戦国】
また別の日には中庭で屈み込んでるを見掛けて、俺の方から声を掛けた。
「どうした、?」
「あ……政宗。」
「何を湿気た面してんだ?」
「あのね……
家康に叱られたの。」
「家康に?」
「うん……これ。」
そう言ってが俺に見せたのは右手の人差し指。
其処には大仰な程に、裂いた晒が巻かれていた。
「どうしたんだ、其れ?」
「わさびに噛まれたの。」
わさび?
ああ、家康が飼ってる小鹿か。
彼奴、美味そうなんだよなぁ。
………こんな事、には言えねえけどさ。
「全然大した事無いんだよ。
わさびにごはんをあげてたら、
ちょっと歯が引っ掛かっちゃった程度なの。
でもね、少しだけ血が出てたから家康が血相変えて
『不注意にも程が有る。もっと確りしなよ。』って…」
あーーー……
家康の気持ちが痛い位に分かるぜ。
きっと家康は自分の飼ってるわさびがに怪我をさせちまった事が許せねえんだろう。
わさびに対してじゃなくて、ちゃんと見ていてやれなかった自分に憤ってるんだ。
『不注意にも程が有る』のは自分自身だってな。
けど、其処は其れ。
あの口下手で天邪鬼な家康だ。
上手く伝えられなくて、結果を叱っちまう様な言葉になっちまったって事か。