第20章 Silent Jealousy【イケメン戦国】
私だっていつかは家康と結婚出来たら…って思ってた。
いつか家康がプロポーズしてくれたら……って。
特別なサプライズなんか無くていいから、高価な指輪なんて要らないから……
夕暮れの海岸……
夜景の綺麗な場所……
そんな有り触れたシチュエーションで構わないから、照れてはにかんだ家康が私だけを見つめて『結婚しよう』って言ってくれたら………。
それなのに家康は『あんな行為』の最中に、しかも投げ捨てるみたいに『その言葉』を吐いた。
自分が大切に大切に抱えていた宝物を奪われた挙げ句、床に叩き付けられて壊された気分だ。
こういう時って涙も出ないんだな…なんて意外と冷静な自分に驚いていると、私を見下ろす家康の目が再び妖しい色を醸し出す。
「俺、を満足させてあげられなかったんだ。
……なんか、悔しいな。」
もう……『そうじゃない』って言っても、今の家康に私の声は届かないんだろうね。
私は唯々、焦点の合わない視線をぼんやりと漂わせていた。
そんな中……
「ふーん……色々有るんだ。
ああ、コレなんかが悦んでくれるかも。
後……コレも要るかな。」
突然紡がれた家康の珍しく弾んだ声。
それからカチャッ…と鍵の開くような音。
聞こえた方向に視線を向けると、テレビの前で屈み込んだ家康が何かを取り出している。
………あそこに在ったのって何だっけ?
この前、秀吉さんと来た時に見た気がする。
確か……アレは………
纏まらない意識を掻き集めて何とか記憶を手繰り寄せた時……
「さ……。
四つん這いになって。」
両手に『ソレ』を持った家康がベッド脇で再び私を見下ろしていた。