第3章 昨夜泣いた君と【薄桜鬼】
それから月日は流れて……
優里は元気で過ごしているだろうか…なんて真っ当な想いを抱けるようになった頃のある夕刻、左之さんが突然俺の部屋に入って来た。
「よう、平助。
呑みに行こうぜ。」
あれからまた俺は気落ちしたり、かと思えば妙に燥いだり、我ながら言動が不安定で可笑しかったと思う。
それでも新選組の皆は何も聞かず、何も変わらず俺と接してくれて居た。
その何でも無い優しさが俺は凄く心地好かったんだ。
「何だよ、急に改まって。」
俺が左之さんに不審な目を向けると
「良いから良いから…。
ほら、行くぞ。」
左之さんはにやりと笑って、俺の手を引っ張り上げた。
何か変だよな…と首を捻りながら玄関に行き、その場で俺は目を見張る。
「何だ……この面子。」
其処には新八っつぁんは勿論、一君に総司……それに土方さんまで居た。
「遅いよ、平助。」
驚いている俺を見て、総司がからかう様に笑う。
「どういう事だよ、これ。」
取り敢えず土方さんに向かってそう聞いてみると、何故か土方さんは照れた様に腕を組み俺から目を反らして言った。
「ああ……何だ………
まあ、たまにはこういうのも良いんじゃねえかと思ってな。
親睦と慰労を兼ねて…ってやつだ。」
土方さんの言葉に俺以外の全員がにやにやしてやがる。
………全く、敵わねえな。
素直に俺の為って言えねえのかよ。
此れだからこの仲間達とは離れられねえんだよ。
「仕方ねえな。
付き合ってやるよ。」
俺は大袈裟に嘯いて、皆の輪の中に飛び込んだ。