第3章 昨夜泣いた君と【薄桜鬼】
「貴方に出会った瞬間から、どうしようもなく惹かれて
『兄』だって分かってるのに止められなかったの。」
うん、俺も同じだ。
どうしようもなくお前に惹かれた。
只、俺はお前を『妹』だなんて知らなかっただけだ。
「貴方に触れたくて、触れて欲しくて堪らなかった。
自分でも駄目だって分かってるのに
どうしても貴方が愛おしかった。」
優里はそこで一呼吸置いた。
続けて良いのか迷っている様だったけど、俺が何も言わない事が優里の言葉の続きを促したみたいだ。
「貴方に愛されて……
貴方に抱かれて……とても幸福だった。
もう死んでも良いって思う位に。
だけど……
一緒になろうって言って貰えた時、
凄く嬉しかったのにそれ以上に怖くなって……
何も言わずに逃げちゃった。」
そういう事だったのか。
今ならお前の気持ちも理解出来るよ。
………もう、遅いけどな。
「真実をちゃんと告げようと思ったけど……
貴方は真っ直ぐで綺麗な人だから。
こんな非道な私を許してくれないかもって…
貴方に嫌われるのが何よりも怖かった。
本当にごめんなさい。」
「もう良いよ。」
俺は寝転がったまま、優里を背中から抱き寄せた。
「もう……良いんだ。」