• テキストサイズ

孤独を君の所為にする【歴史物短編集】

第19章 憧憬なんかじゃない【恋愛幕末カレシ】


「私はね、権力者で無くなった自分を
 此れ程喜ばしいと思った事は無いんだよ。
 だって今はもう何にも誰にも……
 どんな柵にも邪魔されず、
 正々堂々と夫婦になれるのだから。
 君の幸福だけを祈り、
 身を引き裂かれる覚悟で一度は諦めたが
 私に会いたいと、全てを捨てて戻って来てくれた。
 私に抱かれてくれた。
 こんなに喜ばしい事があるかい?
 私は今生で一番の果報者なんだよ。」

ジワジワと滲み出す視界。

如何にも大切だと言わんばかりに私を抱えてくれるこの人が、どうしたって愛おしくて堪らない。


「………
 私と共に、歩んでくれるか?」


「はい……慶喜さん。
 私は生涯、貴方と共に。」

滲ませた涙をポロポロと溢しながら、私は何度も頷いた。


慶喜さんは清廉で、どんな時も優しくて、常に穏やかで。

誰もが憧れて当然の人。

でも、もう私の想いは憧れなんかじゃない。

これからはリアルにこの人と愛し合い、辛い事も苦しい事も一緒に乗り越えて行くんだ。

…………夫婦として。



「ありがとう、。
 私にはもう何の権力も無いが、
 君の事は私自身の力で、必ず守り抜くから。」

「私こそ。
 どんな時も慶喜さんの傍で、
 必ず貴方を支えます。」

「ふふ……
 私とは似合いの夫婦になりそうだ。」

「そうですね。」

見つめ合って一頻り笑い合えば、自然に重なる唇。
/ 834ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp