第19章 憧憬なんかじゃない【恋愛幕末カレシ】
慶喜さんに背中から抱えられて湯船に浸かる。
気持ち好いのはお風呂?
それとも背後から私の身体をなぞる慶喜さんの指?
どちらにも蕩けてしまいそうになっていると、慶喜さんは私の耳元で囁いた。
「さあ……これから忙しくなるね。」
「忙しく……ですか?」
「そう。
私との祝言の準備を急がないと。
ほら、もうの中に
私の稚児が宿る可能性だってあるのだから。」
珍しく弾んだ声で語る慶喜さんを微笑ましく思いつつも、ふと我に返ってみれば………
これって凄い事じゃない?
私は昨日この時代に戻って来たばかりで、慶喜さんに再会出来るかどうかすら分からなかった。
そして帝のお陰で何とか再会出来た途端……
夢中でセックスして、赤ちゃんが出来ちゃう可能性もあって……
翌日にはプロポーズ!?
考えれば考える程にこの状況が信じられなくなって来る。
夢なんじゃないかって、怖くすらある。
そのせいで俯いてしまった私の顎を捉え、振り向かせた慶喜さんの目は不安そうに揺れていた。
「……私は独善的だろうか?
は私の妻という立場は望んでいない?」
………そんな訳がない。
だって私は『この先ずっと慶喜さんと生きて行きたい』と、ここに戻って来たんだから。
何て返事をしよう……そんな風に考えていると、再び慶喜さんは私に優しく語り掛けて来た。