第19章 憧憬なんかじゃない【恋愛幕末カレシ】
「ほらね…お互い想い合ってる癖にさ。
もう間怠い遠慮や無意味な分際なんか取り払っちゃって
二人共素直になりなよ。」
晴明さんの余りにも明るくサラッとした物言いに、私だけじゃなくて慶喜さんの肩の力も抜けていくのが分かる。
私達はもう同じ場所に立って、同じ歩幅で歩いて行っていいんだって思える。
それがどうしようもなく嬉しくて
「慶喜さん………」
目を潤ませてその名を呼ぶと、急に立ち上がった慶喜さんが私の手を引いた。
自然な流れで私も立ち上がれば、私の肩を抱いた慶喜さんがそっと呟く。
「此処では……駄目だ。」
「え……?」
「此処では人に見られて仕舞うからね。
………私の部屋へ。」
その言葉の意味を悟った途端、身体中が沸騰したみたいに熱くなった。
きっと真っ赤になっちゃってる私の顔を覗き込んだ慶喜さんはふふ…と艶やかに微笑んで
「ありがとう、晴明。
賜物は謹んで受け取ったと帝に伝えておくれ。」
私を促しながら部屋を出る際に振り返り、晴明さんにそう告げる。
「了解。
俺は此処でお茶とお菓子を戴いたら適当に帰るからさ。」
満面の笑みで答える晴明さんに私もお礼を伝えようと振り返れば
「良かったね、。
慶喜に沢山可愛がって貰いなよ。」
「………っ!」
そんな事を言われて、恥ずかしさの余り言葉に詰まってしまったんだ。