第19章 憧憬なんかじゃない【恋愛幕末カレシ】
「……っ!
どうして……」
静かに障子戸を開けた慶喜さんは、部屋の中で並んで座る私と晴明さんを見て心底驚いたみたいだ。
それでも観念したように一つ息を吐くと、ゆっくりと部屋に入り私達から少し距離を取った場所に腰を下ろした。
「この状況はどういう事なのかな?
私は帝からの賜物が届いていると聞かされたのだけど……」
そう、私と晴明さんは帝からの遣いとしてこの屋敷を訪れた。
いくら新政府が慶喜さんの屋敷を管制しているとは言っても、『帝からの遣い』という名目は何事にも屈しない最強の手札なんだ。
「嘘じゃ無いよ。
ほら、この娘が帝から慶喜への恩賜品。」
そう言った晴明さんが私の背中を慶喜さんへ差し出すように少し押すと
「を……品物のように扱うのは……」
慶喜さんが眉を顰める。
「相変わらず固いなぁ……慶喜は。
でもさ、自身がその心算なんだから快く受け取ってよ。
ね……?」
「……え?」
「だってはもう慶喜のものなんでしょ?
慶喜にの全部を捧げるんでしょ?」
揶揄う様子を隠しもしない晴明さんに、私も慶喜さんも頬を赤らめて息を飲んだ。