第19章 憧憬なんかじゃない【恋愛幕末カレシ】
「やはり俺を忘れられなかったのか、?
さあ、早々に覚悟を決めて俺に抱かれ……」
「帝!
巫山戯てないで俺の質問にちゃんと答えてよ!」
えーと……今私達の目の前に居るのは日本の最高権力者ですよね?
その帝を相手にしてこの言い種の晴明さんって、ホント凄い……色んな意味で。
だって普通近付く事すら儘ならない御殿を気軽に訪ねて、あっさりと帝に会えちゃう訳だし。
帝の中で晴明さんという希有な存在が、どれだけ大切なのか痛感しちゃうな。
それが証拠に、私への口説き文句を簡単に遮られても
「巫山戯ている心算は更々無いのだが…」
なんて憮然とした表情を浮かべつつ怒りもしない。
「そんなにが好きならさ、
の幸福を後押ししてあげるのが男でしょ?
で、慶喜は今何処に居るの!?」
「だから俺が此の上無く幸福にしてやると……」
「帝っ!!」
こんな状況ながら、真っ直ぐに伝えてくれる帝の想いが嬉しくて私はついつい顔を綻ばせてしまう。
その私を見遣った帝は、少し残念そうに息を吐いて
「貴様のその愛らしい笑顔を、
俺だけの物にしたかったのだが……」
そう言った後、今現在の時世について教えてくれた。
そして帝から聞かされた内容に、私も晴明さんも息を飲む。
今はもう大政奉還の後だったんだ。