第19章 憧憬なんかじゃない【恋愛幕末カレシ】
その途端、勝手にはらはらと零れ落ちる涙。
柔らかい声で私の名前を呼びながら、優しく微笑む慶喜さんの姿が鮮やかに蘇る。
会いたい………
会いたい…
会いたい!
『私の望む結末』なんて、どうでもいい。
慶喜さんと同じ時代で生きて行きたい!
今の私が望んでいるのは唯それだけなんだ。
そして私は一晩掛けて、もう『ここ』には戻らない準備を整えながら朝を待った。
始発で飛び乗った新幹線で京都へ到着し、真っ直ぐに件の神社へ。
「ふふ……
いつかは来るだろうって思っていたけど
こんなに早いなんてね。」
再会した晴明さんは、私の顔を見るなり朗らかに笑ってくれた。
「じゃあ行こうか、。
覚悟は出来てる?」
そう言って伸ばされた晴明さんの手には……あの懐中時計。
「うん。」
私は力強く頷いて、その手に自分の手を重ねたんだ。