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孤独を君の所為にする【歴史物短編集】

第19章 憧憬なんかじゃない【恋愛幕末カレシ】


それからは慌ただしい日々が続く。

この生活が通常だった筈なのに、目紛るしく過ぎて行く毎日が息苦しいのはどうしてかな?

今夜何を食べよう……とか

仕事探さなきゃな……とか

この時代で生きて行く為の糧についてを考えると胸がチクリと痛み、その度に晴明さんの言葉が頭を過ぎった。


『俺は三ヶ月毎にこの神社に居るから……』


その意味が理解出来ない訳じゃ無い。

だけどその意味に従った所で、私の望む結末が迎えられはしないんだ。
 
3ヶ月毎の区切りを強く意識しながらも、流されるように毎日を過ごすしかない。



そんな区切りの日を翌日に控えたある夜、いつものように惰性で点けていたテレビから聞こえたタイトルコールに私の耳と目が釘付けになった。

『本当にあった幕末ミステリー』

日本の歴史を面白可笑しく特集し、コメンテーターや有識者が語り合っては無責任に盛り上げる有りがちなバラエティー番組だ。

私はこの時代に戻って来て以来、敢えて幕末について………

ううん、『徳川慶喜』について調べないようにしてた。

この時代、ネットでいくらでも簡単に情報を仕入れる事は可能だけれど、詳しく知った所で切なくなるのは分かりきっていたから。

でもたった今の今、テレビの画面に大写しになっている文字は『最後の将軍 徳川慶喜』


ダメ……見ちゃダメだ。

そう思うのに私はチャンネルを変える事も、テレビを消す事も出来ずに画面を凝視してしまう。

テレビから流される情報は特に新事実でも無く、誰でも知っている内容が殆どだった。

でも落ち着いた女性ナレーターの声で滔々と語られた、とある一文に私は息を飲んだ。



「3代将軍、家光の時代から始まったとされる大奥の歴史。
 その長い歴史の中で慶喜は唯一
 生涯一度も大奥へ足を踏み入れた事の無い将軍なのです。」
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