第19章 憧憬なんかじゃない【恋愛幕末カレシ】
「私が居なくなる事が不安なのかい?
大丈夫、は何も案ずる事は無いよ。
が故郷へ帰る迄はこの屋敷に滞在してくれて構わないし
君の処遇は帝にも良くお願いしておくからね。
理不尽な扱いを受ける事は絶対に無いんだよ。
晴明も一緒だから、私が居なくても平気だね?」
…………どうして?
慶喜さんだって涙を流してしまう程に苦しんでいるのに……
どうしてそんなに私なんかを気遣ってくれるの?
私が何を言っても、慶喜さんが救われる事は無い。
それなのに自分を犠牲にして、歴史の大きな紆濤の中に身を投じようとしているこの人が切なくて、尊くて………
私は何も言えず、唯々慶喜さんの胸に縋り着く。
「君は……本当にいけない娘だ。
私の決意を揺らがせる。」
そして慶喜さんは、私を両腕でそっと抱き寄せてから耳元へ顔を寄せて囁いた。
「最後に…もう一度だけ……
に触れても良いかい?」