第19章 憧憬なんかじゃない【恋愛幕末カレシ】
私が返事を躊躇っていると
「どうぞ。
入って。」
何故か晴明さんがあっさり慶喜さんを招き入れた。
慶喜さんも晴明さんの声にびっくりしたんだろうな。
ソロソロと襖が開き、先ず部屋の中を覗き込んだ慶喜さんは瞬間息を飲むと
「っ……」
慌てて泣いている私に駆け寄って膝を着く。
「どうしたんだい?
まさか晴明に何か……」
「失礼だなぁ……慶喜。
俺がを泣かす訳無いでしょ。」
憮然とする晴明さん。
「………そうか。
では何故?
ああ……。
そんなに泣かないでおくれ。」
心の底から私を案ずるように、慶喜さんの手が私の背中を擦った。
やっぱり優しいな。
やっぱり……この人が好き。
………それなのに、別れなきゃいけないんだな。
そう思ったら益々涙が溢れるばかりで、慶喜さんを更に困らせてしまう。
………もしかしたら、この状況までもが晴明さんの策略だったのかも。
「あのね……
が泣いてるのは慶喜の所為なんだ。
だからちゃんと話をしてあげてよね。」
晴明さんはそう言い放つと、私と慶喜さんを残して部屋を出て行ってしまった。